2009年5月29日金曜日

【はじめに】「住み開き」とは


「住開(すみびらき)プロジェクト」の立ち上げの経緯について、簡単に記します。

(※このテキストは2010年2月時のものです。立ち上げ者のアサダの肩書きはその当時のものとなっていること、ご了承ください。)


まず、「住開(すみびらき)」という言葉の意味について。

「住開(すみびらき)」とは、自宅を代表としたプライベートな生活空間、もしくは個人事務所などを、本来の用途以外のクリエイティブな手法で、セミパブリックなスペースとして開放している活動、もしくはその拠点のことを指します。

そのような活動を、まずは世間に広めるために、あえて、こういった造語を作りました。だから、現在(2009年5月)の時点では、この言葉をGoogleなどで検索してもこの意味においては引っかかりません。


では、何故、この「住開(すみびらき)」という活動を世に広めようと思ったのか、その辺りを書きますね。


築港ARCのチーフディレクターであり、この「住開(すみびらき)アートプロジェクト」の企画責任者である私、アサダはここ5年程、大阪市域を中心に、いくつかのアートプロジェクトに関わってきました。そこで感じたことは、「アートを実践する/アートに触れる」という行為は、具体的な「モノ」としての作品を作る行為や、美術館や映画館やライブハウスや劇場に訪れるという行為だけではないということ。もっと日常生活文化に近いところから、人や街に対して何らかユニークなアクションを仕掛けていく、またそこに関わって行くこと、それもまた「アートを実践する/アートに触れる」という行為なのだなと実感したわけです。

だからその観点から言うと、アートは上から与えられるものではなく、自ら獲得するものなのだなとつくづく思わされるのでした。


これらの経緯を踏まえ、2006年末から運営を開始した私達「築港ARC」では、アートだからこそ生まれうる、固定概念にとらわれない自由でクリエイティブな発想を、様々な社会分野(まちづくり、福祉、教育、環境、医療、食、育児、労働、農、国際交流、メディア etc…)に転用できるような、多分野間の橋渡しを主なコンセプトとして、情報発信して参りました。その過程で、様々な分野でユニークな社会活動をしている人々に出会ったのですが、その中の何人かに共通点を見いだしたのです。

それは、「自らの生活空間を活用し、様々な人が集まれるパブリックな実践を行ってること」でした。すなわち、「住開(すみびらき)」です。その行為を行っている意図は、各人バラバラ。活動分野も各人バラバラ。ある人は、アーティストがアトリエとして数人で借りれるようなマンションをこしらえ、そこで集まったメンバーで月に数回誰でも参加できるホームパーティーを企画したり、またある人は、介護をしているヘルパー仲間と、障害のある利用者さんのたまり場として長屋の一階を開放していたり、またある人は、造園と農の情報交換の場所として、自宅で週末カフェを開いたり…。このような活動が、もっと広がれば、様々な人が、自分の生活の中から、文化を発信する主垰となり得るのではないか? そうなったらもっと面白い社会になってゆくのではないか?と単純に思ったわけです。

また、別の視点として、昨今の世界同時不況の影響もあって、文化的な活動に対する行政や企業からの支援は大幅な縮小傾向に置かれていることを鑑みるに、これからも既存の文化ホールや劇場等の統廃合は続くでしょう。だからこそ、自分たちができる範囲のところから、パブリックな場所を確保していく必要性を一層感じるのです。


以上のようなようなことを考え、「住開(すみびらき)」をする人たちをメディアやイベントを通じて紹介し、様々な文化的スキルを共有していこうと思い立ち、プロジェクトを開始しました。


このような趣旨が理解されて、今夏はアサヒビール芸術文化財団から助成をいただき、「アサヒアートフェスティバル2009」参加事業として、このプロジェクトを展開していきます。今夏終了後も、引き続き、長期的なスパンでこのプロジェクトを継続してゆくつもりです。何か、この「住開(すみびらき)」というコンセプトに、何かアンテナが反応した人は、良い意見でも、そうではない意見でも是非、お聞かせください。また、「住開(すみびらき)」スポットの情報提供も常に求めていますので、自分の周りに何かそういった活動をしている人がいたら、ご一報いただければ幸いです。


「住開(すみびらき)プロジェクト」ディレクター アサダワタル

(築港ARCチーフディレクター/大和川レコード)